ほとんどの場合は、話しかけなければ、お話にならない。
何ひとつ有益な会話をせぬまま、店を退出することもある。
拙ブログを始めてから、喫茶店に赴き、茶をしばき、腰を休め、マスターやマダムと会話をすることを続けている。
場合によっては、ろくに会話も出来ぬまま訪問を終えることもある。
それでは、記事作りに困る。
のではないか?
そんなことで喫茶店ブログなぞやっていていいのか?
と思うのである。
なるべく繁忙そうな時間帯を避け、アイドルタイムを狙って入店しているのだが、
時には、先客がいたり、
常連客が既にして会話の華を咲かせていたり、
そもそもマスターやマダムが、忙しく動かれていたり、
あるいは、「話しかけなさんな」という鉄壁なバリアが敷かれていたり、
会話の糸口が見出せないことも多い。
先客があるときは、客が引くのを待つ。
喫茶店という大概そう広くはない空間に二人きり、となれば
「いやー、あったかくなってきましたね!コチラのお店は、もう長いんですか?」
みたいなクリシェで話を切り出せる。
もしくは、懐に入っていけそうならば、常連客とマスターorマダムの会話に割って入る。という強引さも時には、必要だろう。
ただ、嫌ですね。
私が常連なら、店主とのいつもの癒しの会話に新参者がワケ知り顔で闖入して欲しくない。
そんな客はダメだ。
となると、会計時に、チラッと話しかける。
というパターンになる。
このタイミングで、出来る会話のボリュームは限られる。
「いやー。今どきコーヒー 一杯300円とか、破格ですねー」
みたいなこと言えるくらいなら、はなからもっとガンガン話しかけている。
もう、喉カラカラで言葉にならないことが多い。
私はもともと人懐っこいタイプではないし、人懐っこがられるタイプでもなく。
クラスや職場の一隅で、突っ伏して眠っているような人間である。
そして、もともとは喫茶店に入ったら、無言で文庫本を開き、黙々と読み、モクモクと煙草の煙をくゆらせ、「ごちそうさまでした!」と言うべきところを、「ちっ、した」くらいに簡略化し、退店するような人品骨柄である。
「何を話せばよいのだろうか?」
ここにきて、戸惑っている。
平田オリザが、演劇を語る時に必ずと言っていいほど触れるのが、
マイクロスリップとアフォーダンス。
上手い役者ほど、無駄な動きが多く、何度同じ場面を演じても初めての要素を加えて、不自然さを回避する、というヤツだ。
日常の延長とはいえど、
喫茶店に入る客となる
という行為で、私は非日常の芝居を演じることになる。
先の上手い役者の例でいえば、私の芝居はただ直線的に喫茶店でコーヒーを飲む人でしかなく、遊びや余白が足りない。
「ブログで拾えるようなネタをひとつでもみっけないとぉぉぉ」
と、急いているような人間には、何も落ちてこない。
芝居が下手なのである。
なので、もう下手な芝居はやめようと思う。
私は、喫茶店に入る客を演じ続けはするが、無理に店主から話を引き出すような手管は用いない。
もとより私に手管などない。
私は、見つけた喫茶店に入り、充分な時間を過ごし、それをここに書き記す。
それ以上のことはしない。
「何を話せばよいのだろうか?」
と考えることはしない。
ただ、そこに座り、時間の流れに身をまかせる。
ことにする。
これからは。
このブログなんなんですか、一体。