喫茶店に行くと、
メニューが既にしてテーブルにある
パターン
と
メニューを水と一緒に持ってくる
パターン
が、ある。
これ、どうしてなのか?
「そんなん、その2パターンの店にそれぞれ聞いてみたらいいやんか」
と言われれば、それまでだが、
「おたく、なんでメニュー、テーブルに置いとかんのん?」
とか聞けないです。私。
そんな喧嘩腰に聞かなければいいだけの話ですがね。
たいてい、聞かなければいけないことを聞き逃す。
それは、会話の流れを尊重しているということでもあるし、聞きたいことを聞くだけで、用意したことをこなすだけでいいのか? ということでもあるし、単に私がへっぴり腰で訥弁だからでもある。
メニュー常駐派とメニュー持参派
それぞれの理由を考えてみる。
メニュー常駐派
- メニューを、いちいち持っていくのが面倒
- メニューを置けるだけのスペースがある
- メニューが常に見える状態ならば、追加注文の可能性が高まる
メニュー持参派
- メニューを水とともに運ぶことが接客の一環となっている
- メニューを置かないことで、客がテーブルを広く使える
- メニューに飲み物や食べ物をこぼされるリスクを考慮している
- メニューの総数が少ないので、常駐できない
常駐派と持参派の折衷として、
メニューがテーブルに常駐はされていないが、注文後もテーブルに残しておくというケースもあろうが、経験上余りない。
大抵は、注文後メニューを引き上げていくように思う。
仮に、この方式はメニュー折衷派と名付けておこう。
私が、もし喫茶店のマスターならば、どう考えるだろうか?
やはり利益至上を取るだろう。
「メニューが常に見える状態ならば、追加注文の可能性が高まる」
この一点をもって、メニューをテーブルに常駐させるだろう。
どんどこ、追加注文してもらいたい。
仮に客が、
「もう小一時間居座ってるから、もう一杯頼もうかな…」
という心理に到達した際に、手元にメニューがあるのと、ないのとでは追加注文のハードルに差が出る。
しかし同時にメニューをこだわって作っている場合。
単に複写して簡便な内容を増幅させることは選ばずに、例えば革張り表紙の雰囲気のあるメニューをひとつひとつ作成しているならば、当然コストも嵩む。
「メニューの総数が少ないので、常駐できない」
ことにもなろう。
そして、
「メニューに飲み物や食べ物をこぼされるリスクを考慮している」
という理由をもって、こだわりのメニューを汚されたくない、と考えるかも知れない。
こう考えると、メニュー常駐派にも、メニュー持参派にも、一理ある。
私が喫茶店マスターなら、利益至上主義をとるが、そんな守銭奴がやっている喫茶店など長続きしないような気もする。
ブログにアフィリエイトをちまちま貼り付けているような輩は、喫茶店業界に足を踏み入れて欲しくない。去れ。
この喫茶店メニューのジレンマ。
囚人のジレンマや暗号のジレンマと並ぶ、世界三大ジレンマといって良いだろう。
いや、ダメだろう。
そこで、一冊の書籍に答えを求めることにした。
『喫茶店サービスハンドブック』
赤土亮二
柴田書店
昭和53年 初版
著者の赤土亮二氏は、
「バー、クラブ、喫茶店、レストラン、レジャーセンター、デパート食堂等の支配人を歴任。その後、経営コンサルタント、日本喫茶学院副院長、アカデミー喫茶学院院長を務める」
この書籍に「メニュー」に関する記述があるので、そこからこの喫茶店メニューのジレンマに一定の解答を得たい。
喫茶店における基本サービス「十大用語」の「ご注文おうかがいいたします」の項にはこうある。
客席に行き、メニューをヌーッと出して黙って立って待つ。これはお客様にあまり良い印象を与えない。したがって、「ご注文をおうかがいいたします」といいながら、メニューを出そう。そこに、かなりのファッション性が生まれてくるし、お客様に好印象を与えることができる。
これにかわる言葉としては、客席で再度、「いらっしゃいませ」といいながらメニューを出してもよいし、「メニューを、ごらん下さいませ」という言葉でもよい。
役所の窓口ではないのだから、ただ黙って立っていてはだめなのである。
赤土氏の提唱する喫茶店基本サービスにおいては、「メニュー常駐派」は想定されていない。
「ご注文おうかがいいたします」と言いながら、メニューを出すことで、
かなりのファッション性
を生めるようだ。
あと、お役所仕事をディスってはいけないと思う。
さらに、「基本動作」
「メニューは置いてくることも必要」の項では、
メニューを見る前に注文されたら、メニューを置いてくるとよい。置かれたメニューは必ず見てもらえる。なお、メニューを見て注文された場合でも、メニューを置いてくるのも、一つのテクニックである。サービス時にメニューを下げれば、能率は同じで、しかも次回の販売促進にもつながる。
まさかの「メニュー折衷派」である。
置かれたメニューは必ず見てもらえる
確かに、注文したものが来るまでに、手元にメニューがあれば、高確率でパラパラと捲ることになるだろう。
続けて、「サービスのハイテクニック」
「どのコーヒーになさいますか」の項では、
「コーヒー二つ」といわれたとき、「かしこまりました。少々お待ちください」といって下がる。
これでも充分なサービスではある。しかし、ハイテクニックではない。もし、コーヒーが数種あるのなら、「どちらのコーヒーになさいますか」といい、そして、メニューを開いてだせば場合によっては、高いコーヒーがでることすらあるのだ。
なるほど、ハイテクニックである。
客に高い商品を選ばせる。
客単価を一円でも上げる。
これが商売である。
正しい。
しかし、なんか嫌だ。ちょっと、受け付けない。
ほら、また、ちょっと隙があるとアフィリエイトをまた貼る。
こういう心根の人間に喫茶店業界に関わって欲しくない。失せろ。
というわけで、喫茶店業界の大立者によると、
喫茶店のメニューは、
客が来るたびに、かなりのファッション性を醸させながら持参し、メニューを見ずに注文されたのなら、メニューを見せて「こんなんもありますけど」とハイテクニックで利益を狙い、さらなる利益を求め、必ずテーブルに置いてくる
のが正解のようだ。
メニュー常駐派
メニュー持参派
メニュー折衷派
それぞれの店舗には、その都度聞いてみたい。
できれば。
それぞれの店舗には、それぞれの理念や哲学があるだろう。
『喫茶店サービスハンドブック』が示すのは、喫茶店経営に則した一面でしかない。
喫茶店でメニューをテーブルに置いてたり、置いてなかったりするのは、なぜか?
問いは続いていく。