2023年/アメリカ/英語/101分
あらすじ
1990年代半ば、オレゴン州。FBI支局に勤める新人捜査官のリー・ハーカーは並外れた直感力を買われ、重大な未解決事件の担当に抜擢される。ごく平凡な家族の父親が妻子を殺害したのち、自ら命を絶つ。そのような不可解な殺人事件が過去30年間に10回も発生していた。いずれの現場にも侵入者の痕跡はなく、”ロングレッグス”という署名付きの暗号文が残されていたのみ。”ロングレッグス”とは一体何者なのか。真相に迫ろうとするハーカーは暗号文を解読し、事件にある法則を見出すが、その正体も行方も依然としてつかめない。だがやがてハーカーの過去とロングレッグスの意外な接点が浮上し、事件はさらなる恐ろしい事態へと転じていくのだった…。
出典:映画『ロングレッグス』公式サイト
煙草シーン
ひとつだけ
主人公ハーカーが、上司の家に招かれた後、帰りの車内で運転しながら一服
煙草シーンの役割
上司の家には、嫌々ながら訪れた為、その帰り道での喫煙には、自身を慰労する意味合いが見てとれる
その後、喫煙シーンがないことを鑑みると、この日の会食がよほどストレスフルだったのだろうと思われる
ベスト煙草シーン
一ヶ所しかないので、ベストもワーストもない
感想
「最高の連続殺人鬼映画(『羊たちの沈黙』以来)」
という触れ込みだが、当然そんな事はない。しかし、ホラー映画というのは前宣伝、惹句の大嘘込みで楽しむジャンルなので特に問題はない。
FBIと連続殺人鬼、主人公の親子関係やトラウマといった要素は確かに『羊たちの沈黙』を彷彿とさせるが、それほど珍しい設定でもないだろう。
The Silence of the Lambs (Dubbed)
単純に謎解きの快感は無く、ヨハネの黙示録とか悪魔崇拝といった「ぽい」要素が生かされているとも思えない。
新人捜査官役のマイカ・モンローは背景を滲ませるような無表情ではなく、本当に何も考えていないような無表情で全編を演じ、ボトックスに失敗したマリリンマンソンのようなメイクをしたニコラス・ケイジは、『ブルー・ベルベット』のデニス・ホッパーに憧れてるだけ、みたいな狂気の沙汰っぽい演技をする。「俺たちのニコケイを無駄使いすんな!」という向きがあるやも知れないが、ニコケイは今作のプロデューサーも務めているので、本人がやりたくてやっていると理解するしかない。
ただ、車を運転しながら
「ダディーー、マミーー、俺をこの地獄から救い出してくれーーーーー」
と叫ぶシーンは、まかり間違えばネットミーム化するくらいの面白さはあった。
殺人鬼のアジトの造形は、この手の映画の見どころだが、「下にいる」ニコケイ演ずるロングレッグスの住処は、ゾッともギョッともしない。映っているレコードも「ルー・リード持ってきたよ!」とプロデューサー ニコケイが楽しそうに置いているんだろうレベルで特に意味はないのだろう。
公式サイトのバナーに載っている電話番号03-6820-6910にかけると、ニコケイの歌声が聞けるが、ニコケイが楽しそうなら良かった、という思いだ。
年代を表す為なのか、壁にクリントンやニクソンのポートレートがかかっており、しかも不自然に目立つ撮り方をしているように感じたのだが、そこを掘っても意味はないのだろう。
子供がカギになるお話なので、主人公が身籠っていたりすれば、ストーリーに厚みを出せたのではないか?とも思うが、恋人要素とか入れたら、とっ散らかるだけかも知れない。
エンドクレジットが黒字に赤で、上から下に、通常とは逆に流れる。
タロットカードの悪魔が逆位置で出ると、「これから物事が好転していく」ことになるので、『ロングレッグス』のエンドロールをしっかり最後まで観れば心身が浄化されるに違いない。もしや、この映画の一番の見どころはここかも知れない。