金沢 なるべく吸える喫茶店

吸えたら良いけれど吸えない時もあるから飲めたら満足です

カラオケ喫茶 和院「カラオケオンリーですよ」寺院だらけの街に響くそれぞれの唄。

喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。

 

<本日のサ店>

和院

外観

内装

メニュー

アイスコーヒー ¥600

ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!

 

金沢市には「寺町」という地区があり、その名の通り寺院がひしめき合っている。
寺寺寺寺寺寺寺寺。寺がteraある。寺がデラある。

この付近を、大晦日に通ると、四方八方から除夜の鐘が鳴りまくる音をしとどに浴びることができるので、オススメというか、その向きの方にはオススメ。

あまりにも寺が多いので、「ここ前に入ったかなぁ」と思い出しながら、門をくぐってみて、「ここ前にも来たような気がするなぁ」といった感想を持つ。
訪れたことを覚えていられない私のような脳味噌を所持する人間にとっては、何度訪れても新鮮な気分で拝観できる。忘却は発見の父である。

 

 

寺町は犀川べりから見ると高台にあるので、犀川沿いに降りる階段や坂道が多くあり、何度行ってもバリエーションルートを選べる。
今日は、この階段を使った。

私などは、京都の清水寺を訪問して、参道の長さに辟易してしまい入口の仁王門を見て、納得し、清水の舞台は見ずに引き返してしまうような体力なので、階段や坂など嫌悪の対象でしかない。
体力も、頭脳も、財力もない。絶望的。

 

この日もいくつかの山門をくぐった。初めて訪れたのかどうかは定かではないが、初めて訪れたような気持ちで堪能できた。

 

前回、「やすらぎ喫茶 話唄」が、もう無かったこともあり、この日はカラオケ喫茶リベンジを期する思いが満ち満ちていた。

kanazawa-drifter.net


念ずれば通ず、とはよく言ったもの。

「カラオケ喫茶」を冠したお店を発見。

 

お隣には常徳寺という寺があり、掲示板にはこんな言葉が、

 

イギリス人作家チェスタトンの言葉。

「自己を信じて疑わぬというのは罪であるばかりか、それは一つの弱さなのだ」

 

まさしく、この世にはお前の想う「喫茶店」しかない。などと考えているのは、罪であるばかりか弱さなのだ。
なぜ、そこにある「カラオケ喫茶」に踏み出していかないのか。
私は罪深く、脆弱な人間であるが、「カラオケ喫茶」への扉を開くことは出来る。

 

店内の様子をまったく窺い知ることが出来ない、扉。

 


軒下には、季節感と時空を超越した呪物が並べられ、ますます入口扉のバーハンドルに手をかけることがためらわれる。
…店内から歌声は聞こえてこない。
行けるのか。



よし、行きまーす。

雨傘を傘立てに突っ込み、扉を開ける。

 

「こんにちはー」

「あら、はい。どうぞー」

 

すぐ左手に広がるカウンター周辺は、暖色系の色合いの中に、鮮やかな花々、多彩な酒類が並ぶ壁、手書きポップが目を引く。

カウンター席には、先客の方がおられ、一通り歌い終えられたのか、まったりとした空気が漂っている。

 

入口から見て、右手に二卓並んだテーブルのひとつに座る。

 

「何にされます?」

「何があります?」

「何でもありますよ」

「冷たいもんなら、何が?」

「アイスコーヒーとか、コーラもあるよ」

「じゃ、アイスコーヒーもらいます」

 

メニューが見当たらず、口頭で何となく注文完了。

 

「…あっ、ここに食べもんのメニューもあるんですね」

「うん、簡単なものだけね」

 

 

「ウチはカラオケがメインだから。ちょっとつまめるものとかね。お酒もありますよ」

 

特選天プラ盛り合わせ
にゅうめん

など、気になるフードも豊富。
あと、今気付いたが

ラーメン各種

の「各種」が気になるところ。
何種類用意されているのだろうか、聞いておけばよかった。
意外とベトコンラーメンとか、あったかも。

 

「ウチは温かい飲み物は全部500円。冷たいのんはぜーんぶ100円アップで600円。覚えやすいでしょ?」

 

失礼な表現だが、ざっかけなさが愛嬌に転じるような明るいママさん。
(いつもなら女性店主は「マダム」と呼称するが、カラオケ喫茶に関しては「ママさん」でいきたい)
お客さんから愛されそうな、途端に一見を常連に転ばせそうな、ママさん。

雨足を気に掛けながら、デンモクで曲を選ぶお客さん越しに質問を。

 

「煙草、大丈夫ですか?」

「どーうぞ」

 

という訳で無事に、タスク完了。「和院」は

喫煙可


少し寒い日だったので、熱い番茶、吹き寄せ的おかき盛り合わせも付いて、アイスコーヒー到着。

 

 

「こちらは業態としては、カラオケ喫茶でいいんですか?」

「そう、メインはカラオケ」

「私、恥ずかしながらカラオケ喫茶初めてです」

「そう?歌ってもらっていいんですよ!ウチに来るような人はね、カラオケボックス行くよりも、みんな人に聞かせたいんよね」

 

その頃、満を持して先客の旦那さんが、マイクを掴む。
思わず拍手。
ママさんも拍手。

流れ出すメロディー。映し出される曲名。

『星の流れに』
菊池章子

……いやー、存じ上げません。

なかなかにダンディーだ!

朗々と歌い上げられて、得点84点!
拍手拍手。

「ご主人は、おいくつですか?」

「え、私?」

「はい、今歌われた曲知らなかったものですから」

「85」

「おー、エイジシュートですね!85歳で84点」

「私が子どもの頃の歌。聞いたことなかったやろうね」

「はい」

「あんたさんは?おいくつ」

「もう50過ぎました」

「ほいじゃ、あんたさんの生まれる前の歌やわいね」

「…1947年の歌みたいですね」

「あんたさん、50なら… 就職氷河期の頃や。大変な時や」

「いえ、お父さんの生まれた頃と比べたら、屁みたいなもんで」

「時代ごと時代ごと。時代時代に気苦労はあるもんやわいね」

歌い終えても、かくしゃくと


「今、降っとるかいね?」

入口ドアを開けて確認すると、小雨になっている。

「今、小降りです」

「そしたら… また」

ママさんに別れを告げ、私にも

「あんたさんも、さようなら!」

と、片手を挙げて挨拶してくれ、颯爽と雨中を帰っていかれました。
見事な歌いっぷりでした。


「カラオケは1曲100円なんですね」

「そう、でもね15曲やとディスカウントで1000円」

「なるほど」

 

「この貼ってあるラッキーナンバーって何ですか?」

「この点数になったら、いいこと。豪華な粗品を進呈しますよ」

 


「このラジカセは現役ですか?」

「歌を録音してるんよ」

「ああ、お客さんの歌ですか?」

「違う違う、ラジオで深夜に新曲が流れるから。それで録音して練習するの」

「あー、配信される前のヤツ」

「そう、こういう本見てね。先に練習しとくわけ。私は新曲専門やから」

 


記録媒体としてカセットテープが現役で活躍している現場に遭遇したのは、何年いや何十年ぶりだろうか。

「やっぱ、ママさんは上手いんですか?」

「上手いわよ。だけどね、こういう店でコッチが上手すぎるとお客さんが歌いにくいでしょ。だから、ほどほどに」

「みんな練習して、ここに来るんですね」

「そう。仲間で集まってもらって、飲み食べ歌い放題っていうのをやる時は、みんな練習の成果を披露し合うわけね。あんまり大人数だと、自分の番がなかなか回って来ないって不満が出るでしょ。そこで、私が歌うと顰蹙もの」

「みんな自主トレしてるんですね」

「いや、ほら、街のカラオケの先生?教室いっぱいあるから。そういうカラオケ教室は、金沢はカラオケ屋より多いよ」

知らないことは多い、この時代。

 

 

忍者寺こと妙立寺も近いので、外国人観光客が流れてくることもあるそうで、

「そう、けっこう来るんよ。だけど、喋られんし、お相手するの難しいから。その時は『カラオケオンリー、カラオケオンリー』って言ってね。そうしたら、大体みんな『OK OK』って。カラオケって言葉は万国共通ね」

 

忍者寺まわりについては↓も、どうぞ

kanazawa-drifter.net

 


本来「カラオケ喫茶」を余すところなく堪能するならば、私もここで一発カーリー・レイ・ジェプセンあたりを、ママさんの土手っ腹にぶちかまさねばならない。

しかし、所詮三下。
か弱き罪人である。
ママさんとマンツーで、ブルーノ・マーズをぶっ放す根性はない。
変に妥協して、島津亜矢を解き放つ余裕もない。

ただただ、ママさんとのおしゃべりに興ずるのみ。




「やっぱり、お客さんはご年配の方が多いですか?」

「そう、だから今日みたいな雨模様はダメね。私より年嵩の方ばかりやから、雨が降るとみんな出てこんくなる。雨降ると、この商売はダメ」

 

ママさんは現在76歳。
三重県生まれで、この場所に「和院」を開いて20年以上になる。

「和院」の営業時間は、 昼の12時から深夜0時という長丁場。
しかも、年中無休。

 

「買い物とか、支払いとかは全部午前中に済ませて、あとはずーっとココに居る。夜12時までって言ってもね、お客さんの興が乗ってくると夜中2時頃までいる人もあるからね」

 


ところで、「和院」という店名はどこからなのか。
やはり、酒のワインからか。
ママさんに質問をぶつけると、逡巡しながら答えてくれた。

「私、和子(かずこ)っていうもんで、それにこの辺は寺町だから寺院が多いでしょ。『院』を『和』にくっつけて『和院』にしたんよ」

 

なるほど。
寺寺寺寺、寺院寺院寺院寺院和院。
寺だらけのこの町に、すっかり馴染んでいる。


「まだ、降ってるかね?」

「あっ、今止んでますね。夜はお客さん来そうですよ」

 

 

お会計を済ませて、お暇します。

 

「また、お仲間とでも、この辺通ったら寄ってくださいー」

 

この次は、夜営業に紛れ込んで、デュア・リパから忘らんねえよとラブリーサマーちゃん挟んで、シーアの『シャンデリア』を天高く打ち上げたい。
そんな妄想を膨らますだけは、妄想だけは一人前の、カラオケ喫茶半人前が訪れた「和院」でありました。
また、来まっす。

 

google MAP

所在地

金沢市寺町5ー1ー27 小山ビル

営業時間

12:00〜24:00

定休日

なし

席数

カウンター x 8
テーブル x 2

電源

なし

Wi-Fi

なし

SNS

なし

店内BGM

なし

トイレ

未確認

喫煙の可否

喫煙可