喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。
<本日のサ店>
ソロ

















ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!
海外や日本各地から、金沢を観光目的で訪れる人々の多くは、まずは金沢駅に降り立つと思われる。
そして、その大半は、鼓門をサッと撮影して、宿泊先や市街地へとササッと移動されると想像する。
でも、ちょっと荷物は邪魔になるが、駅近辺で軽く茶でもしばきたいと考えるのもまた人情。
その際に、軽く寄って行きたい喫茶店はあるのか?
これが、意外と金沢駅から徒歩圏内にいい感じの喫茶店が見当たらない。
みんな大好きスタバは2,3ある。
が、金沢まで来てスタバでいいのか?
と思わなくもない。地域限定タンブラーなどの収集家ならば、即スタバで構わないが、「旅先でスタバ」
そんなことで旅行者として限られたローカルアタックのワンポイントを蕩尽することへの躊躇いを感ぜられる向きもあろう。
半端な地方都市のひとつの典型を、金沢もなぞっているので、駅周辺は目新しさに中身が追いついていないような商業施設が目立つ。
そこで、「なんで2泊なのにそんなに大荷物なんですか?」的な装備をまとっていても、金沢駅から大して移動せずに赴ける喫茶店として第一候補に挙げたいのが、今回訪れた「solo ソロ」である。


金沢中心部への玄関口は、金沢駅東口だが、そこは一旦踵を返して西口に向かっていただき、「なんか何にも無さそうな通りじゃない?」と不安がもたげてくる頃合いまで少し歩けば、目が洗われるような白壁を誇る蔵造りの喫茶店「ソロ」に出会える。

金沢に高速バスで乗り入れるような方は、6:00到着予定が巻きに巻いて、早朝5:30あたりに駅前に放たれて、どこに入ろうにもどこも、何処たりとも客を迎え入れる準備が無い。
一点残念なのは、「ソロ」の開店時間は正午。
6時間以上は暇を潰さなけねばならない。
なので、高速バス勢は真っ先に近江町市場で海鮮丼食って、兼六園の早朝営業に突っ込んでから、今一度「ソロ」まで戻ってきて頂きたいところ。
というか、高速バス利用を再考してもらった方が良いかもしれない。移動での疲労感は、目的を見失わせがちである。そんなに早朝から来ても金沢はあなたを包みこんではくれない。
この日は、21時を過ぎてからの訪店だったので、いよいよ「ソロ」の外観はムーディーで素敵。
入店すると、左手に小上がりのテーブル席。
右側には雑誌類が置かれ、吹き抜けを上に見ながら進むと、会計場があり、左手にはカウンター。カウンターでは、グラスを傾けるカップルがしっぽりと佇んでいる。
入口そばにある雑誌や新聞が、喫茶店感を漂わせるが、コレは完全に小粋なバーである。
二階への階段が見えたので、迎えてくれたマスターに告げ上階へ。
二階部にはプライベートルーム、男女別のトイレ、オープンな丸テーブル席、奥まっていて味集中システムを思わせる壁際の二人席。
革張りのソファが身体の外周すべてを支えてくれる席へ。

居心地バツグンです。
もう下限2時間は確定。上限5時間はいけそうです。
壁に正体する具合なので、天然とんこつラーメンに集中するが如く、読書にも、コーヒーにも、そしてままならない己の人生にも存分に向き合えること必至。
異常なほど充実した品目の中から、
大人のクリームソーダのカシスフレーバーを注文。
酒です。
1650円です。
ちょっとしたディナープライス。
でも、躊躇いはゼロ。
この環境なら相応な価格。
メニューにあるブレンドコーヒーは550円ですので、総じてお高い訳でもない。
木製表紙のメニュー表は、day menuとnight menuに分かれており、バータイムに昼のメニューを頼むと、220円アップだそうです。
昼に訪店すると、night menuや酒の肴は頼めないので、夜に来て昼夜全体の豊富な品目から悩んで選択するのが良いのかも。






悩ませるほどの品目が綴られたメニューには、コラムやイラスト、箴言などが引き算のデザインで配置されており、イカしてる。
テーブル上には、書籍が数冊。
その隣には灰皿。
5時間居たら、二箱は吸うね。
という訳で、「ソロ」は
喫煙可



一階、二階と床面積は相当大きいが、贅沢な造り、キッツキツに席設定を詰め込まないことで、ラグジュアリー感が高められた空間。
私の入店からほどなく来店された女性二人組は、お酒を飲みながら、明日の福井行きでの目的地の検討に入っている。
この時間まで、これだけ元気に口角泡を飛ばし談論風発お盛んなので、多分このお二人は、高速バス勢ではないだろう。朝6時から動いていたならば、この時間にはもう死んでいるはずだ。





大人のクリームソーダは、結構なアルコール度数。
甘い酒は飲みすぎるから要注意である。
酒は甘くても、人生は苦い。
「ソロ」のイキフンに合わせて、誰もが膝を打つような箴言を述べたかったが、限界知能の私にはどんなに背伸びしても困難な剣ヶ峰。


呼び出しボタンがあり、壁に正体しているので、なんだか高級な漫画喫茶みたいだな。
とか、思う。そういう比喩しか思い浮かばないのが、私の例示の限界値でもある。
ここが「ソロ」でなく、快活クラブだったら思わず呼び出しボタンで快活のり弁丼を頼みたくなるし、個室ビデオだったら抜きネタを籠いっぱい10枚ばかし持ってきたくなるところである。
限定的な席数配置と、棚や壁によって他の客と目線が交わらないような絶妙な席設計がなされているため、没頭感が高い。
という趣旨を述べたいがために、底辺感溢れる例示でお伝えしたところである。

そして、今日は一日中自転車を走らせていたので、疲労で倍化し、酒が回ってしまって、もう酔った。
酔った勢いで、隣のテーブルの女性たちに、
「福井行くなら、〇〇へ行くといいげんよ〜」
みたいな軽口を叩いてしまいそうなくらいには、酔った。
大人のクリームソーダで酔ってしまう、大人。
それは、子ども。
というか、この酔いは大人のクリームソーダによるものではないのだろう。
「ソロ」の創り出す豪奢で静謐な空間と空気を吸い込み過ぎて、それに酔っているのだろう。
フラつきながら階段を下って、会計をお願いする。
対応してくれたマスターは、モヒカンじゃない仲野茂といった容貌で、すなわちコワモテなのだが、その面構えと反してソフトな語り口である。
「こちらは長いんですか?」
「そうですね、一度移転してるんですが、商売自体は30年ですね」
メニューの中表紙には「since 1993」とあった。
「そうですね、こういった個人店は少ないかも知れませんね」
入店時、いい感じにしっぽりしてたカップルが退店されていたので、カウンターを撮影させて貰う。
「また、伺います」
「ぜひ、どうぞ」


帰り際、酩酊上等で出口の方向を間違えて、
「いや、そっちじゃないです。そう、そっちです」
と、マスターに促される。
この千鳥足は「ソロ」がくれたもの。
あなたが私にくれたもの。
キリンが逆立ちしたピアス。
すみません、酔ってましてね。
ごちそさまです。




google MAP
所在地
金沢市広岡1ー10ー14
営業時間
喫茶 12:00~18:00
バー 17:00~23:00
定休日
火
月(月2回)
席数
カウンター x 3
テーブル x 3
二階利用可
電源
未確認
Wi-Fi
未確認
SNS
なし
店内BGM
Miles Davis『Flamenco Sketches』
Dave Grusin『Two For The Road』
Miles Davis『Pfrancing』
Roberta Flack『Killing Me Softly With His Song
トイレ
小 x 1
大 x 1(ウォシュレット) 男女別
喫煙の可否
喫煙可




