喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。
<本日のサ店>
狼騎
ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!
結構、降る。
雪の話。
2025年は、久々の雪景色の当たり年。
観光で来金するには、この正月は最高のコンディション。西から来る方々は、冠雪のおかげで、マニック・ドリーム・ピクシー・シティと化したKANAZAWAを胸いっぱい楽しんで帰ってほしい。雪玉を胸いっぱい吸いこんで、嗚咽をもらして欲しい。
豪雪ともなると、さすがに用を成さないが、金沢の道っぱた、階段、坂道などではいまも筵(むしろ)が敷かれ、我々をスリップから守ってくれている。
ケミカル感溢れたノンスリッピン用品よりも、雪を含んでこなれた筵は、優秀すぎる逸品。近郊のホムセンに筵や薦(こも)が並ぶようになると、当地では冬支度が始まるのである。
ここまで書いて、「寧ろ筵」みたいな戯言に陥らなかったことを褒めて欲しい。そして、エクスキューズの仕草で、結局、地口を口走ってしまったことを、そのことについては、そのことについてだけは、責めて欲しい。せめて。
金沢の中心部、香林坊を横切るメインストリートから、西に下り長町武家屋敷跡へ向かう道すがらに、「狼騎」はあります。
階段脇の電飾スタンド看板には、誇らかに「喫煙可能店」との記載。
もう、入店前に喫確です。
そう、狼騎は
喫煙可
結構難しい「狼騎」の読みも、「rou-ki」とローマ字表記してくれている。喫煙情報と併せてダブルで、有用な情報を提供してくれている看板である。キーコーヒー情報も加えれば、トリプルクラウン。
そして、なんと、なななんと、入口の傘立て付近にも念を押す念には念をのかたちで、トリリンガルで、YES SMOKING.
シエスタあたりの入店で、先客はゼロ。
「一人です。あ、テーブルでもいいですか」
「はい、どぞどうぞ〜」
人懐っこい笑顔が印象的な俳優キム・サンホを思わせるマスターが、サンホに負けず劣らずの人懐っこさ満点の笑顔で迎えてくれる。人は第一印象で、他人の目を最初にとらえるというが、私がマスターから得た第一印象は、この笑顔。
メニューとお冷、個装おしぼりが到着し、ご所望品を吟味したのだが、今日はなんとなくコーヒーに食指が。
その第一要因は、店内に響くクラシカルミュージックだろう。
名曲喫茶というのが、金沢に現存しているのかどうか?まだ預かり知らないが、クラシック音楽とコーヒーという食べ合わせが至福、という思想への憧れに負けた、と言っても差し支えないだろう。
店内は、入口入って左右にテーブル席。左奥にカウンター、その向かいにもテーブルがあり、大きな弦楽器も見える。ウッドベースか、コントラバスか、その区別がつかないくらいに、私の音楽的知識は皆無。
程なくコーヒーが届く。
いつも感じるが、飲む前はコーヒーってすごく美味しそうなんだけどなぁ。
たっぷし、砂糖にミルクをイン。
そして、お茶請けも、付いてる!
久しぶりに食うな。
大統領が喉に詰まらせることで高名なプレッツェルとか、アメリカンポリスが警ら中につまんだり、ゾンビ退治中のガンマンを欣喜雀躍させるトゥインキーとか、舶来のドメスティックスイーツ数あれど、ビスコフはその名の由来が、Biscuit for Coffee だというのだから、まさに King of ko-hi no otomo. どれも、カロリーえげつなさそうだが。
しばし、印刷された文字列に目を落としていると、マスターの電話が鳴った。
「はい、そう。うん。おとといくらいから。そう、水漏れが止まらんのよ。うん。じゃ、いまから行くわ。うん、一回見て欲しくて。わかりました。お願いね」
水漏れトラブルが起こってしまっているようで、マスターが出掛けそう。
一人きりにされるのか?あるいは、一旦閉店するので退店を促されるのか?
しかし、数分経っても、マスターは落ち着いて座っておられるので、心配は杞憂のようだ。あとから、森末慎二がやってくるのかもしれない。
ただ、なんとなくトラブルめいているので、長居は無用。
帰りがけにマスターに聞いてみたかったのは、店名の由来。「狼騎」とは。
労基なら知ってるし、朗希ならメジャーに行ったが、狼騎?狼の騎士が出てくるファンタジーノベルでもあるのだろうか。または、マスターの名前が「ろうき」で、今期メジャーに行くのだろうか。
席を立って、お会計。
「ありがとうございます。500円になりますね」
「タバコぉ、吸えるの押してますね」
「そうですか?最近、珍しいでしょ。吸えないところ増えたから」
特段、緊張していた訳ではないのだが、マスターの破顔一笑で口先が滑る。私の口先に筵をよこせ。その後も、関係のない近辺にかつてあった映画館の話などして、店名の由来には1ミリも触れられず退店。
とにかく、心置きなく肺が真っ黒になるまで煙草は吸えるので、狼騎ルーツ問題は次回来店時に持ち越し。
マスターの笑顔がすべてを狂わせる。
google MAP
所在地
金沢市長町1ー1−62 2F
営業時間
11:00~17:00
定休日
なし
席数
カウンター x 6
テーブル x 3
電源
未確認
Wi-Fi
なし
店内BGM
J.S.Bach カンタータ第156番 片足は墓穴にありてわれは立つ から シンフォニア
C.P.E.Bach オーボエ協奏曲 変ホ長調 Wq165 第1楽章 Allegro
J.S.Bach オーボエ・ダモーレ協奏曲 ニ短調 BWV1053 第1楽章 Allegro
トイレ
未確認
喫煙の可否
喫煙可能