これまで、たくさんの喫茶店を巡ってきて、
「また、来ます!」
と何度も口にしてきた。
実際、「今度は、アレを頼もう」「次は、ソレについて聞こう」など楽しみはたくさんある。
しかし、存外、金沢市内だけでも膨大な数の喫茶店があり、同時に「閉店」という事態もいくつか目の当たりにしていることから、初訪問を優先してしまっている。
なんの気なしに、注意散漫に、街を流していると目に入ってこなかった「喫茶店」というヤツが、意識し始めるとあちこちに散見され、
「ここも行かなきゃならん」「あそこは行き逃せない」
となっている。
二巡目を敢行できるのは、いつになるのか?
遥か彼方。
か。
先日、2025年6月半ばの真夜中。
午前1時。
駅西方面から帰宅せんと自転車を漕いでいて、
喫茶 岸
の前を通りかかった。
「喫茶 岸」
は、まだ雪の降る季節に訪れ、マダムと楽しくお話させていただき、あったかロイヤルミルクティーに癒され、看板猫の『あやめ』と出会えた素敵なお店。
「岸」には、猫が本来二匹いる。
『あやめ』
と
『みるく』
私が訪店した折には、『みるく』はお出かけ中で、『あやめ』とだけは触れ合うことが叶った。
「今度は、『みるく』と会いたい」
そう、思いながら再訪はできていない。
自転車を走らせながら、ふと「喫茶 岸」の方に目を向ける。
と、店先の路上に白い塊が見えた。
猫。
猫の姿。
尾山神社脇に自転車を停め、白い塊に近づくも、警戒心はゼロ。
目線を合わせると、ゴロンと横になりお腹を触らせてくれる。
「あんた、『あやめ』だね」
特徴的なぶち柄と、ふくよかな姿体。
間違いなく「岸」で出会った『あやめ』である。
この日は、6月で梅雨の真只中だというのに、昼間は晴天、35℃に迫る暑さ。
夜半を過ぎても、25℃近くあり、夜風に当たりに外に出てきたようだ。
『みるく』も外出中かもしれないが、付近には見当たらない。
「おーーい!『みるく』ーーっ!」
としたたか発声したかったのだが、すぐそばの尾山神社の石段でカップルがしっぽり佇んでいたので、恥ずかしさに負けて、発声はつつしむ。
慎み深さが美徳とされた時代はとうに終わったので、「つつしみ」という美名の背中に隠れて、意気地を発揮しなかっただけである。
チキン。
キャット。
みるく。
5分ほど『あやめ』と遊ばせてもらうと、『あやめ』はやおら身体を起こし、「岸」の入口扉の前でポーズを取ってくれた。
というか、もうオッサンの撫でまわしに愛想が尽きただけだと思われる。
「いいよー、『あやめ』絵になるよー」
正確には、「2回目」ではないが、「喫茶 岸」の魅力のひとつである看板猫とたまさか出会えたので、二巡目第一号は図らずも「岸」となった。
次はちゃんと入店して、冷コーとか飲みます。