金沢 なるべく吸える喫茶店

吸えたら良いけれど吸えない時もあるから飲めたら満足です

喫茶 グライダー「東山かー行かないなー、って」2025年7月7日に閉店されました。

喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。

 

<本日のサ店>

グライダー

外観

内装
メニュー

トイレ

紅茶 アメリカンオータム(アイス) ¥600

ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!

 

実際問題、「喫茶 グライダー」はもう無い。
東山茶屋街の路地、二階にあった喫茶店はもう無い。

私が「グライダー」を訪れたのは2025年6月のこと。
この時点で、閉店は決まっており、一旦は年明け閉店を予定していたが半年ほど延期されたようである。
ともあれ、「グライダー」は2025年7月7日に閉店され、もう無い。
私は、なんとか滑り込みで訪店を果たしたことになる。

 

東山の旧遊廓群は、金沢随一の観光地。
和菓子や茶を押し出したカフェーが林立する地区。

当然ながら、おしなべて「吸えない」し、日本庭園と飾り窓を眺めながらキャピキャピするような柄でもないので、訪問予定リストからは遠ざけていた訳である。
そういう態度が、新しい扉を開けない主要因であるのは重々承知しているが、開いた扉の先に待っているモノへの偏狭な偏見を捨て去れない。
そのことが、私の生活を一層侘しくしているのである。
ここで問題とされねばならないのは、中途半端に歳を取って、なまなかで具にもつかない経験を積んだが故に生じる「どうせ、そんなもんでしょ?」という耳年増な態度であり、その「新しい扉」は自分のためには開かれない、と盲信している姿勢である。
「どうせ、俺のためには扉は開けてくれないんでしょ」
そう信じている。
あえて言えば、カスである。

「開けてもらう」のではなくて、「開けに行く」べきなのである。
快く迎え入れてもらえない、という被害者意識に酔って、「開けてくれない」と拗ねて見せているだけ。
どうして、果敢さや好奇心を端から脇に置いてしまうのか。そのような向き合い方を続けていては、侘しさを胸いっぱい抱えて没していくのを待つだけの余生。
それで良いのか?
まあ、もう、ほぼ、それで良いのだが、どこかに僅かでも「新しい扉」への関心が隠しきれないのであれば、反省し、猛省し、歩みを続けていかねばならない。

といったような、内罰描写が既にして気色悪い所作。
なので、「グライダー」の話に戻ります。

以前訪問した「カフェ N」は、東山の観光メインエリアからは少し距離がある。

kanazawa-drifter.net


「グライダー」は、いわゆる古民家リノベが施されたシェア型町屋の一隅で営業されていた。

 


さまざまな肌の色をした人々で賑わう茶屋街を抜け、猥雑な横丁、ディスイズ隘路に辿り着く。
これは私にとっての「新しい扉」かも知れない。

 

 


コチラは「ROJI東山」なる場所で、その202室に「喫茶 グライダー」は入居しているようである。

土禁ではなかったので、そのまま正面の階段を上がり、左手奥の店舗へ進む。
店へ続く扉は開放されており、店内の様子が見える。
扉は開かれていた。招き入れてもらう必要も、こじ開ける力も要らなかった。

すぐ右側に厨房にはマスターが居られ、店内奥、窓を背に壁サー的に着席部、数卓のテーブル。
お一人のご常連らしき女性がマスターと楽しげに、旅についての所感などを話されていた。ラスベガスの印象など。ビバ。

 


小じんまりした店内は、アメリカ映画に出てくる大学生の寮の一室みたいで、音楽まわりのポスターやフライヤー、書籍が目につく。委託販売なのかアクセサリーなども置かれている。

イラスト付きのメニューは存外充実していて、クレープは大変美味だとのことだが、幾種もある紅茶系の中から、「オレンジとクランベリーが香るルイボスティー」とのキャプションのある「アフリカンオータム」をアイスでいただくことにする。

 

 

マオカラーの白シャツにハンチング姿のマスターはお若く、笑顔が眩しい。

閉店までの再訪を告げながら退出されたご常連さんを見送って、マスターに扱っている紅茶の解説を受ける。

 

 

ニューのヨーク発祥だという「ハーニー&サンズ」を多く扱っていて、いくつか茶葉の匂いなど嗅がせてもらう。

 

「どうされます?もし、お好みの香りありましたらご注文変更しますか?」

 

と言っていただいたのだが、もう私くらいの小物になると、自分の好みの香りが何なのか?すら分からないので、紅茶葉のスメルを味わうごとに「なるほど」「なるほどですね」を繰り返した挙句、

 

「いや、やっぱアフリカンのオータムで落ち着かせてください」

 

となったのであった。
「落ち着く」とは何であろうか?
フルーツフレーバーの紅茶のどのようなモノを飲んでも、私の口をつく感想は、
「すっごく!フルーティーですね!」
くらいしかない。なら、いっそフルーツ食っとけ!である。

 

 


しばし後に供された「アフリカンオータム」は大変にフルーティーであった。
オレンジとクランベリーの香りがした。

以前訪れた「Michi みち」でフルーツティーを嗜んだ際には、ミノが入ってるのかと勘違いした

kanazawa-drifter.net


途中、トイレを拝借。

店内にはなく、この建物共同のトイレが一階部にある。
このシェア型町屋には「グライダー」以外にも、店舗やオフィスが入居しており、白壁の連なりにいくつもの個性的な施工を見物できた。
オシャレすね。さす、東山。

 

 

10年前に名古屋から金沢へ移られたというマスターは38歳。
4年前に「グライダー」を開店。

 

「ちょっと、アレですけど東山って来にくいイメージあるんですよね」

「そうですよね(笑) 店開きました!って人に言うと、東山かー行かないなー、って(笑) でも来てみるとスゴくいいですよ」

 

何となし、「新しい扉」かどうかは別にして、東山は地元民の行く場所では無いような気になってしまっている。

 

「古くからのお店とか、観光客向けではないトコも沢山残ってるんでしょうね」

「そうです。ここから近いんですけど、『天鳳』っていうラーメン屋さん。多分スゴい古いんですけど。ラーメン450円ですよ!チャーハンもベチャベチャ系でいいです!」

 

とのこと。
観光客価格設定を度外視した老舗のようである。
うん、スグに行こう。

のち、「チャーハンにおけるパラパラ系至上主義の弊害」についてひとしきり話し、続けて「うどんにおけるコシ至上主義の蔓延と、カウンターであるフワポチャ勢の躍進」についても話しが弾む。

 

そして、当ブログにとって、大事な質問もせねばならない。

 

「当然、禁煙ですよね?」

「そうなんです、なんか法律的なアレで吸える店には出来なくて」

「マスターは吸わないんでしょ?」

 

爽やかを絵に描いたようなマスターはヤニカスには程遠く見える。

 

「吸わないです。でも、僕ライブハウスのタバコで汚れた壁とか、そういう雰囲気好きなんですよねー」

 

かつてのライブハウスでは、フルハウスギッチギチのホール内で、無法にもタバコに火を灯すクソどもが跋扈していたものだ。
酸欠状態で着火出来ないような状態にも関わらず、タバコ吸いにとっては解放区ではあった。

そんなことで、従いまして、「グライダー」は

吸っちゃダメ

 

「グライダー」は清潔極まりなく、ヤニ壁とは真反対の喫茶店

しかし、マスターの音楽好きが随所に覗く店内。
そこから、音楽談義に花が咲く。

昨年、マスターはアメリカへ赴きNOFXのファイナルライブに参戦。ボブ・モウルド、グリーン・デイのスタジアムライブ、リプレイスメンツのベース トミー・スティンソンなど毎日ライブ三昧の旅をしたそうである。

 


私もかつてのライブ体験などを語り、楽しく会話させていただいた。

が、振り返ると、「あっ!俺そのバンド観てますよ!」みたいな、愚劣に歳を重ねただけの経験値を振りかざしてしまった。
すみませんでした。
どう考えても、私なんぞよりもよっぽど好奇心を行動力に駆動させることが出来るマスターの方が音楽を愛している。
すみませんでした。

 

 

途中、Theピーズの話にもなった。
そうなれば、当然この店名「グライダー」はピーズの曲名から?

という話をしなければならないのだが、音楽的にマウント取るクソムーブに忙しく、尋ねるのを失念。

 

2025年10月現在、マスターは世界を旅されているようです。
「喫茶 グライダー」のInstagramは残されており、時折、旅の様子を知らせてくれています。インスタには、閉店の挨拶を綴った投稿も。

 

www.instagram.com

しばしば店名の由来を聞かれることがありましたが、一人では動き出せなかった自分が、たくさんの方々のご協力のおかげでお店を始めることができた自身の状況を、エンジンを持たずに風の力で滑空するグライダーに見立てて喫茶グライダーと名付けました。


Theピーズが、長年の沈黙を終え発表したアルバム『Theピーズ』の最後に収められた曲『グライダー』の歌詞には、こうある。

輪ゴムかけて空へ飛ばすんだ
風に乗っかって重力を起すんだ
エンジン無いんで静かなもんで
もう何の問題もないさ
行こう浮かんで行くんだ

作詞:大木温之


この符号は。
もう間違いなく「喫茶 グライダー」の店名と、ピーズの楽曲を切り離すことは難しいと思える。

今「グライダー」は世界のどこかでフワリフワリ浮かんでいて、いつかは金沢に舞い降り、また紅茶を淹れてくれるだろうか?
それまでには、私もフルーツティーを飲んで、「フルーティーですね」とほざく以上のボキャブラリーを身につけておきたい。

 

あと、帰り際にお冷やの入ったグラスを床にぶちまけてしまってすみませんでした。
年長者の風上にも置けない輩でありました。

次はちゃんとシャンとしますんで、また喫茶店やってくださいね。
お疲れ様でした。

 

google MAP

所在地

金沢市東山1ー10ー1 locolocohigashi 202

営業時間

8:00〜18:00

定休日

水・木

席数

テーブル x 4

電源

なし

Wi-Fi

なし

SNS

instagram

店内BGM

なし

トイレ

同建物内1F

喫煙の可否

吸っちゃダメ