金沢 なるべく吸える喫茶店

吸えたら良いけれど吸えない時もあるから飲めたら満足です

茶房 ぎんぼし「ずーっとハムサンド作りっぱなし」金沢の夜を灯す老舗喫茶。

喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。

 

<本日のサ店>

ぎんぼし

外装

内装

メニュー

玉子サンド ¥800
アイスコーヒー ¥550 ソーダ水 ¥500

ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!

 

深夜喫茶、オールナイト喫茶とは言わずとも宵の口をこえて夜の半ばまで開けていてくれるお店を赤ちょうちん以外で探すのは難しい街といえる。金沢というところは。

呑みやディナー、やや風に寄った夜の店を経て、その日の終幕を迎える場所として喫茶店が存在してくれたならば、ただただ嬉しい。

かつて金沢にあった深夜営業の喫茶店の遺構は👇

kanazawa-drifter.net

kanazawa-drifter.net

 

かつては、金沢での飲食の一大拠点は、間違いなく片町スクランブル交差点付近であったし、今でも活況を呈している(呑み屋の客引きがメニューをクルクルさせながら寄ってくるし)が、しっかりと確実に金沢駅方面に移っている感覚がある。

付近の雑居ビル群は老朽化が進んでいるし、もう数年もすれば呑み屋街というよりも風俗街としての意味合いが強まるのではないか。

 

 

殊に、犀川大橋からスクランブル交差点までの道のり、金沢劇場サウナオーロラが存在していたビル群はいかにも古色を放っている。

今回訪問した「茶房 ぎんぼし」が入居している片町一番館というビルも長くこの地にある。

 

陽が沈み始め、あたりが暗がりをつくると、家路へ急ぐ勤め人たちの足を留めるようにカラフルな看板が灯り出す。
時間にすれば18時あたり、片町一番館のエントランスの隅っこに、日付けが変わるまで我々を迎え入れてくれる喫茶店「ぎんぼし」の電飾看板が姿を見せる。

 


バス通り側から、ギンギラリンのエントランスを抜けると、右手に「ぎんぼし」は現れる。
片町第一番館は、テナントも多く入居し、不夜城感を醸してはいますが、どことなく寂しさも漂う雰囲気。レトロという程こなれていない所に、安心感を覚える按配の内部構造。

ビルの両サイドにある入口付近には灰皿が設置されている。
ということは、吸えない店も多いのだろう。


「ぎんぼし」の扉を開けると、カウンター席に先客が一人。
その奥に、マダムの姿を認めることができた。

店奥のカウンターに腰を下ろさんとしたら、マダムが一言。

 

「そこ、ちょっとガタガタするよ」

 

椅子の座面に触れ、軽く動かしてみると確かにややグラつきがある。

 

「じゃ、コッチ側にします!」

 

と、反対側の端っこに陣取る。

私が座れなかった「ガタガタ席」には、後に来店された夜職らしい煌びやかさをたたえた女性がすんなり着席されたので、いわゆる「キープ席」だったのかも知れない。
あるいは、
いつもの人なら大丈夫だけど、アナタみたいな百貫デブが座ったら、ただでさえガタついてるのに、即効破壊されるかも…
といった事を危惧されたマダムによる婉曲的な促しだった可能性も捨て切れない。
捨て切れはしない。というような、被害者思考からは何も生まれない。

 

「玉子サンド頼めますか?」

「いいですよ」

「じゃ、玉子サンドとアイスコーヒーお願いします」

 

先客の旦那は、ビールをちびちびやっており、指の間には紙タバコが挟まっている。
という訳で、「ぎんぼし」は

喫煙可

 




私の百貫デブはあらゆる地点から疎外されるという被害者意識は、たとえそれが事実だとしても脇に置いておくとして、結果的に座らせてもらった席は、マダムの熟練の技が眺められる特等席であった。

 


食パンに丁寧に並べられたキュウリ、焼きたての卵焼きがのせられ、辛子マヨで味付けされる。
アイスコーヒーは、最初からやや甘めに味付けされており、ミルクを加えると爽やかさがいや増す。

 


「ネットを見ると、コチラの玉子サンドが美味しいと出てたんですよ」

「ああ、そうなんです? 嬉しい。でも、ハムサンドが一番のオススメですよ」

 

ハムサンドは、玉子サンドにハムがプラスされたもの。
玉子トースト、ハムトーストは同じ具材で焼きが入れられる。

卵焼きの固すぎず、それでいて噛み応えも残した焼き加減が絶妙で、スッと鼻先を抜けていくマスタードが爽快。

厨房の隅には、『パンブラザーズ アベ』の袋が。

 

「もう、ウチはずっとココのパン」


その日届けられた食パンが無くなってしまえば、サンド類の提供は終了となる。

 



『パンブラザーズ アベ』は、片町 せせらぎ通り商店街で店を構える

やがて、例の「ガタガタ席」にやってきた夜職らしきママさんが、バタートーストとジャムトーストを注文される。それらは、持ち帰り用にアルミホイルで包んで渡される。

 

「今日は、8時半からお客さん」

「あら、もうすぐやがいね!待ってね、もうすぐ出来るわよ」

「急がんでいいよ。これ、プリンスメロン

「あらー、そんな悪いわいね」

「なんも、気にせんで!見切り品やし」

 

いつも出勤前に顔を見せるのだろうママさんは、タバコに火を点け、トーストの出来上がりを待っている。

これが、きっと夜営業の喫茶店「ぎんぼし」のいつもの光景なのだろう。

 


店内の客への提供を終えても、マダムが手を休めることはない。
ハムサンドを次々にこしらえ、紙製の折詰に詰めていく。

そして、出来上がりを見計らったように、何組もの客がハムサンドの折詰を受け取っていく。
「ぎんぼし」のハムサンドは、片町の夜を泳ぐ人たちのレーションなのだ。

 

「僕も、ハムサンドにすればよかったです」

「ふふ。今度試してみてください」

「いつもこんな感じで作りっぱなしですか?」

「うん、いや、いつもじゃないけどね。忙しい時は、店開けてからずーっとハムサンド作りっぱなし」

 

マダムは、少し足がお悪いようで、時折カウンター内の小さなパイプ椅子に腰掛けられる。

 

「開店からは、もう48年」

「おいくつですか?」

「もう大台に乗ったよ」

「じゃあ、後期高齢者に入ったんですね」

「そうそう。もうとっくにね(笑)」


店には17時ごろやって来られ、もろもろ準備をこなし、開店は大体18時。
どんな時も、開店から小一時間はサンドイッチやトーストの注文分を作ることに追われるそうだ。

閉店は、日を跨ぐ0時。

 

「夜中までやってる喫茶店、もうあんまりないですよね?」

「昔はたっくさんあったのよ。今はもうウチぐらいやねぇ」

 

「今は、夜中までやってもダメなんや。人来んもん」
とは、先ほどやってきた。ご常連のタクシー運転手の方の弁。

かつては、もう一人店員さんを雇っており、0時を過ぎても店を閉められないほどの来店があったという。

 

ご常連のドライバーさんは、先ほど向かいのオーロラビルにある中華料理店『天和(てんほう)』で食べてきたとのこと。
『天和』には、先頃閉店の報があった。

 

「もう、『天和』閉まるんですよね?」

「そう、今週までかな?ちょっと延長するらしいけど」

「客、一杯でしたか?」

「うん、入っとたね。もう食べられんからねー」

「ビルの取り壊しなんですか?」

「いや、もうご夫婦がお年やからやろ。昔は朝4時頃までやっとったからね。今でも、2時かな。身体しんどいわな」

 

「あら、私も行かないと!お客さんおらん時にゆっくり話したいわ」
と、マダムも話に加わる。

通りを挟んで、長く営業してきた者同士。深夜まで、私たちを迎え入れてくれたお店の一方が暖簾を下ろす。
どんな話をされるのだろうか。

「私、明日行ってみるわ。寂しくなるねぇ」

 


さて…、
もうこの項をこの辺で閉じた方がキレイだとは思うのだが、
この日の「ぎんぼし」訪問には、まだ続きがある。

私が、「ぎんぼし」を訪れた19時半過ぎから、ほとんど無言で瓶ビールを飲んでいたお方(後にLINE交換をして、Oさんとお名前だとわかるのだが)が、おあいそをマダムに告げる。

「1000円です」

「1000円?安っ!いいんですか?今、令和ですよ」

とのやりとりからOさんが、堰を切ったように、ご自身の持論を展開され始める。

ボリビアって、全部そこらにある。カネ一切いらないんですよ、信じられます?」

「そうなんですか?」

以降


日本はペラい
誰も本質を知らない
俺たち50過ぎた人間は、後輩に背中を見せなきゃいけない
情報は知識ではない
図書館行け
ブラーブラーブラー



この辺で、マダムは会話から降り、パイプ椅子に座り、クロスワードパズルを解き始める。

それでも、Oさんの独演会は続く。

若い奴らが嫌がっても、本質を伝えなきゃ、本物を見せなきゃならない
俺たちにはその責任がある
そう思わんですか?
ブラーブラーブラー

Oさんが見せてくれたボリビア動画

ほう、ナルホドですねー。
わかるような気がします。

と半分気絶しながら応対していたのだが、マダムはあからさまに迷惑そうであった。
Oさんも、決して悪い人ではないようだし、仰っている事も壮年の決意として耳を傾けるべき事象も多いのだが、如何せんOさんは、「ぎんぼし」入店前から、したたか酔ってらしたようで、かなり呂律は怪しく、時折大声になる。

Oさんは、小一時間にわたる壮年の主張を述べられて

「しっかし、1000円て。令和だぜ」

との言葉を残し、私と固い握手を交わし(なぜ?)、家路に着かれた。

 

「マダム、ごめんなさいね」

「いや、大声出されるからキーンとしてしまって」

「すみません。ちょっと注意したらよかったですね。うるさかったですね。でも、遅くまでやってると酔っ払いも来るんじゃないですか?」

「いや、私、あんな風になってる人は帰ってもらうから。他のお客さんに迷惑でしょ? 常連さんなら一言注意出来るけど、あの方今日初めてだから。言えないものねー」

「すみませんでした」

「あなた、よく付き合って喋ってたわね。ああいいうのは、私困る」


申し訳ない気持ちと、この空気をかき混ぜたくって、ソーダ水を追加注文する。
しかし、なんでも金で解決は出来ない。
諸兄も絶対に、「ぎんぼし」に酔っ払って押しかけて、うざ絡みしないようにお願いします。マダムがクロスワードパズルをやり出したら、もう帰った方が良いです。

 


「ごちそうさまでした。今日はご迷惑おかけしました」

「なんも、いいんよ。また、ゆっくりいらしてね」

「そん時は、ハムサンド頼みますね」

「はい。ありがとう」

 

Oさんとの小一時間を含めて2時間以上滞在してしまった。
なんたる。


店外に出てから気づいた、


壁には「茶房 ぎんほし
看板には「茶房 ぎんぼし
ビル内のテナントサインには「ぎんほし
ビル外の電飾看板には「ぎんぼし

 

 

「ほし」か、「ぼし」か。
どっちが正しいんだろう。
聞き漏らした。
次来る時は、もちろんハムサンド。
そして、濁点の有無の謎についても聞かなきゃならない。

片町へほうぼうから、はしばしまで、さめざめと咲く、ふしぶしに訪れたい、すみずみまで素敵な、星々について。

 

google MAP

所在地

金沢市片町1ー7ー19

営業時間

18:00〜0:00

定休日

席数

カウンター x 5
テーブル(二人掛)x 1
テーブル(四人掛)x 1

電源

なし

Wi-Fi

なし

SNS

なし

店内BGM

テレビ(NHK総合

トイレ

未確認

喫煙の可否

喫煙可