金沢 なるべく吸える喫茶店

吸えたら良いけれど吸えない時もあるから飲めたら満足です

クルーズ「とにかく悔いなく生きる、こと」早朝5時から店を開けるワケ。

喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。

 

<本日のサ店>

クルーズ

外観

内装
メニュー

トイレ

ベリーベリースムージー ¥600

ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!

 

 

農本主義

という思想がある。
「農本」とあるように「国の基本は農業」であることを確認し、産業革命以降誕生した「工業」へのカウンターとして登場した思想体系であり、逆に言えば近代化に於いて「農」が蔑ろにされなければ顧みられなかった考え方でもある。

愛国主義」には、ナショナリズムパトリオティズムという二つの訳があり、どちらも祖国や民族への献身を指すが、ナショナリズムは国勢拡大を望む軍国主義と結びつきがちであり、一方パトリオティズムは、郷土を純粋に想い、過去と未来を繋ぐ橋として社会主義革命思想とも親和性の高い「愛郷心」とする理解もある。

主に明治期までは、急速な近代化工業化による日本の農村社会の疲弊を支えるのが「農本主義」であった。その後、第一世界大戦後の世界恐慌を経て、昭和期に入る頃には反近代的な色あいが強まり、国家主義と結託し、二・二六事件の思想的背景に「農本主義」があるとされるようになった。

つまり、「農本主義」は、当初元来のパトリオティズム的意味合いから出発しつつ、やがてファシズムへの萌芽を含むナショナリズムへと変遷していったと捉え得る。
現在では、地産地消や自国地保護、有機農法、シュタイナー農法といったオーガニック思想が、反グローバリズムと連携しながら極右思想へと到達している。自国への愛は、他国や他国民を嫌悪するという歪んだ排斥を生み、「愛郷心」は転じて、排外主義に至った。この変遷を歴史から学ぶには、藤原辰史『ナチス・ドイツ有機農業:「自然と共生」が生んだ「民族の絶滅」』が詳しい。


ナチス・ドイツの有機農業: 「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」

 

という訳で、孫引きコピペ上等で書き慣れていないタイプの文章構成をしてしまって疲労困憊。

農本主義」それ自体の根本理念は、昨今の米不足や価格急騰により、これまでの農政の不備、農家への圧政を鑑みるに見直されてしかるべきであろう。
自然への回帰を標榜するという意味で、本来的な農民の暮らしぶりに、近代化工業化に塗れた我々がアジャストするのは困難を伴うが、至極牧歌的な営みとして、

「陽が昇るにあわせて働き、陽が沈むにあわせて休む」

という生活様式に準ずることは、憧れも含めて、実践するのにやぶさかではない暮らしぶりであろう。

 

今回、訪れた喫茶店およびマダムは、そんな流されて生きている現代人の暮らしぶりに棹をさし、実践されている。
google先生の事前情報とは全く異なる営業時間。土台、google先生もそこまでか、といった按配を再認識させられる。スマホなぞ弄ってる暇があったなら、暗くなったら、さっさと床につけば良いのである。


金沢の中心部、片町のスクランブル交差点から大方向岐阜方面へ南進する。
犀川大通り沿い、笠舞という町に「クルーズ」はある。

 


入店すると右手にカウンターとテーブル席が広がる空間がある。
カウンターに腰掛け、数多ある品目のなかからベリベリーのスムージーを注文。
この日は、5月半ばだというのに最高気温28℃を記録する夏日であり、スムージーを飲むには最適な日和であった。

 


明らかに喫煙できる雰囲気ではないが、カウンター左手書棚に灰皿を発見!
すわ、吸えるのか?

カウンター内で、食器を洗うマダムに尋ねてみる。

 

「コチラ、禁煙ですか?」

「いえ、店内禁煙です」

「これ、灰皿ですよね?」

「はい、それは名残りで。もう何年前からですかねぇ、店内に仕切りが必要だとか決まりが出来たので禁煙にしたんです。お吸いになられるんでしたら、外の入口の横に灰皿ありますので、ソチラでお願いします」

 

この店内禁煙措置は、2020年4月の健康増進法改正にともなう対応でもあるだろうが、のちに伺う「マダムの決心」にも由縁するのではないか、と想像する。

スムージーが出来上がるまでの間隙を縫って、店外でヤニ摂取。
明らかに今日を通じて、私が初めての喫煙行為におよんだように見える。まっさらな灰皿が私のような人生の落伍者によって汚される。申し訳ないです。

 


つーか、ちゃんと店外にも禁煙のサインはあった。
という訳で、「クルーズ」は

限定的喫煙可

 

 

店先に灰皿を設置してくださっている喫茶店もいまや希少。
限定的とは言え、吸える場所があることを心から感謝せねばならない。

店内に戻るとすぐにベリーベリースムージーが供された。

 


失礼ながら、着卓した瞬間は「少なっ!」と感じたのだが、凍らせたベリーが程良くクラッシュされ、ヨーグルトの酸味とガッツリ手を組んだ、爽やかの上を行く飲みごたえと満足感。サイコー。夏場ならば、喉を下りていく感覚をより味わえるに違いない。サイコーです。

先ほど、一服のために店外に出た際に、店先に飾られたツーリングライダーの写真を見かけた。

 

「あの方は、お身内とか?ご常連ですか?」

「私はオーナーではないので、詳しいこと分からないんですけど、オーナーがバイクに跨った写真を撮らせて欲しいとお願いしたみたいです」

 

 

壁に「食パンの値段表」という貼紙を見つける。

 

「パンは… 作ってらっしゃるんですか?」

「そうです、自家製で。そこの製パン機で作ってます」

「あ、アレ。パンの機械なんですね!最初、炊飯器かと思ったんですよね」

 

撮影させてもらう際には、

 

「もう、古い機械だから恥ずかしいんですけど…」

 

と仰っていたが、この3台の製パン機がフル稼働して、数種のパンが自家製され、それを目当てに買いに来る方々も多いそうだ。
また、店内の食事は「にんじんパン」と共に供されるそうである。

 

 

「炊飯器がいっぱいあるから、ラグビー部の寮かと思いました!」

 

という、私の寮母ジョークは完全に流されたので、慌てて二の句を継いでいく。

 

「パンはいつでも買えるんですか?」

「予約制なんです。予約してもらったら、朝5時から受け取ってもらえます」

「はい?5時からですか?その時間に、お店開けてるんですか?」

「はい、ウチは早朝5時オープンなんです」

「マジすか!?」

 

応対してくれたマダムとは別に、「クルーズ」のオーナーを務める方がおられ、彼女はあるきっかけから、それまでとは「クルーズ」のあり方を変えた。

「クルーズ」の創業は1980年。
早朝からの営業を開始したのは12年前。

当時、オーナーさんは脳出血で倒れ、病を機に

「今までやろうと思いながら出来ていなかったことをやっていこう」

と決めた。

「日の出から働く」

ことの実践もそのひとつ。
同時に、それまで外部から仕入れていたパンも自家製に。
ヘビースモーカーだった習慣も改め、キッパリ禁煙に転じた。

 

 

「朝5時からで人は来るんですか?」

「よく来られていた方が亡くなられたりもあって、今はそんなに来られないですかね」

 

金沢全域に渡って指摘されることだが、山側環状線と海側環状線が整備されたことによって、それまでと車の流れが変わり、主要とされた道路の交通量が減った。あるいは、減少に転じてはいなくとも、生活道路としての意味合いが薄れ、「ただ通り過ぎる」だけの道となった。

「クルーズ」が面している通りには、以前訪れた「マンデリン」もあり、「マンデリン」のマダムも同様の話をしてくれた。

kanazawa-drifter.net

 

一聴、15時閉店とは早すぎる店じまいと感じるが、早朝5時からの営業ならば適切すぎり閉店時間
日の出とともに働き出すということは、日暮れとともに体を休めることの正当な解だろう。5時から15時って、人間らしく働く時間としてはふさわしいタームなのかも知れない。

 

 

「なんかオーナーさんって、『人生二周目』って感じですね」

「そういうことなんですかね。とにかく悔いなく生きる、こと。そういう感じですね」

 

いやー、「人生二週目」なる超絶ありきたりなフレーズでしか「クルーズ」を表現出来ない私の貧弱なボキャブラリーよ!
事実、「二周目に頑張るわ」的な諦観を抱いて人生を過ごす人間が大半だろう。
「クルーズ」のオーナーさんのように、途中から人生を転回させることが出来る人は真に尊敬に値する。

 

途中トイレをお借りし、内部の貼紙の量とメッセージ性に少し引いていたのだが、オーナーの決心と実践の様子を伺ってから眺めると、得心に至った次第。

 

帰りがけに店奥におられたオーナーがカウンター端に着席される。

 

「さっき、話してたオーナーがそちらです」

「ごちそうさまでした。早朝営業始められたきっかけとか色々伺ってたんです」

「そうですか」

「また、パン食べに来ます」

「はい、またいらしてくださいね」

 

お二人の笑顔に送り出されて退店。
パンも一度買ってみたい。5時に来店もしてみたい。

 

右手前におられるのが、オーナーさん

 

「入口で、もう一本吸わせてもらって帰ります」

「はい、どうぞー」

 

これだけ仰ぎ見るような人生の先輩に接しながらも、ヤニカスは理想も抱けず、決意も掴めず、肺に煙ぶち込みながら滅するのだろう。
喫煙しながら、ようよう店外を見ると、しっかり営業時間は書かれていた。

 


少し気が早いが、まだ暗い冬場の早朝5時に、灯りを点した「クルーズ」は絵になりそう。また来ます。

 

google MAP

所在地

金沢市笠舞本町1ー1

営業時間

5:00〜15:00(水のみ20:00まで)

定休日

なし

席数

カウンター x 7
テーブル x 3 

電源

なし

Wi-Fi

なし

SNS

なし

店内BGM

なし

トイレ

和式

喫煙の可否

限定的喫煙可