喉の渇きを癒したいとき、足の疲労が臨海に達したとき、しのつく雨をしのぎたいとき、買ったばかりの文庫本を開きたいとき、そして、紫煙をくゆらすひと時を過ごしたいとき。 路傍に佇む喫茶店の門をくぐる。 なるべくならば、煙草の似合う、そんな店がいい。
<本日のサ店>
N
ここより下は、当ブログ執筆者の身辺雑記をふんだんに含んだ、取るに足らないとしか言いようのない雑文雑記ですので、お店の基本データのみを知りたい方は、上記目次より各項目をクリックし、あなたが必要とする情報を摂取したのち、早々に離脱することをお勧めします。バイバイ!
自宅の近所に絵画教室があり、というかあって。
というのは、もう新たな絵画を極めんとする生徒さんはおられないようで、ほぼ閉業に近い状態であった。
私が新たな喫茶店を求めて、家を出て、その絵画教室の前を通ると、「ご自由に箱」が出来上がっていたので、首を突っ込むことにする。
私もこれまで日本各地に居住し、引越し作業を幾度もこなしてきた。
引越しというのは、その作業というのは、まさに「こなす」作業であり、ここに留まっていた数年間、己がいかに無駄な物を買っていたのか?に真正面から向き合う作業でもある。次なる引越し先にまで、あえて荷造りをしてまで運びこむ必要のある物などほとんど無いことに気付かされ、己の審美眼の無さに対峙し、人生をはかなむこととなる。
こういった「ご自由に箱」にお宝が眠っていることはまず無い。
誰かが要らない物は、誰もが要らない物である確率も高い。
それでも自分が必要だとして手にした物を捨てるという行為は、ニアイコールで、「その物を必要とした自分の感覚」を捨てることになり、自己否定につながる。
なので、捨てずに誰かに手渡すことで、その物の価値を算定したいのである。
みうらじゅんの言うところの、『ワゴン体質』を発揮して、こういった「ご自由に箱」からサルベージしてしまうような人は、無駄な物を溜め込んでしまっている可能性が高い。
そしてサルベージする行為を、さながら義侠心を有するように肯定してしまう。
さて、私はこの「ご自由に箱」をスルーできたのか?
そっとやり過ごせるような人品であったなら、こんな文章は書いていないのである。
ほとんど使う予定も、必要もないマチス風の抽象画が描かれたマグカップが二つほど背負ったリュックの中で、カチャカチャと音を立てている。また、つまらぬものを拾ってしまった。帰るときは、別の道で帰ろう。またまた、つまらぬものを拾ってしまうだろう。
ひがし茶屋街は、金沢市内随一の観光スポットであるが、例によって地元の人間はあまり立ち寄らない場所でもある。私も、姉が帰郷した折りに『吉はし』に随行するか、『はやし』にすはまを買いに行くくらいで、ほとんど訪れない。
が、観光地には、喫茶店も多いはずで。
ならば、腰の重い私も動かねばならない。
なるべくタバコが吸えれば良いが、東山あたりのサ店で喫煙可能店など現存しているだろうか?
ひがし茶屋街の混雑ワーキャーゾーンをやや北上した東山二丁目交差点。
もうすっかり、ワーもキャーも聞こえなくなったあたりに、「CAFE N」はある。
扉を開けると、左手にカウンター、先客がお一人。
右側には、窓に沿って着席する形でテーブル席。
奥のテーブル席に座らせてもらい、ジンジャーエールを注文。
お若いマダムがお店を取り仕切っておられる。
メニューは無くカウンター側の壁の黒板に本日のお品書きがある。
食事やお酒も充実。
『立山』『竹葉』らの地酒一升瓶もある。
テレビからは、午後のワイドショー内で気の利かなそうなレポーターが開幕間近の大阪万博会場を案内している。
「万博盛り上がっとんのかいな?」
「どうだかね」
「あんた、行くんか?」
「私は行かない。興味ない」
北陸地方の民衆を代表するような意見を小耳に挟みながら、私も大きく首肯する。
「まだ、意外と寒いな」
「あったかそうで、寒いよね」
ご常連らしき紳士を、
「気をつけてね」
と送り出すマダム。
客はおしなべてカウンター側を向いて座ることになるので、常時メニューが目に入る。ので、追加注文も捗りそうである。
喫茶店のメニュー常時テーブルに置いてない問題の一つの解であろう。
複数人で訪店した場合には、横並びで飲食することになる。
映画『セブン』のブラッド・ピットなら、隣に座ったモーガン・フリーマンに
「隣に座んな!勘違いされるだろーが!」
とよろしくない叱責をする所だろう。
逆に見れば、常にカウンター内のマダムと正対することになるので、話が弾む所だが、お一人帰られると、またお一人ご来店という感じで、マダムに話しかけるタイミングを失いがち。
東村アキコの漫画が多くあり、入口そばの壁には大相撲の番付表が貼ってあるので、その辺もろもろマダムに話しかけたかったのだが、勇気出ず。悲報、いい年こいたオッサン勇気出ず。
りんりん言わせて勇気を振り絞ることを半ば諦めた私は、トイレをお借りすることにする。


トイレは清掃が行き届いており快適。
そして、ご常連さんが描かれたのか、安寧タイプの絵手紙が飾られていた。
個人居酒屋のトイレには、「オヤジの小言」系の書があることが多いが、コチラは安らぎ志向でホッとする。
トイレの間口には、暖簾がかかっているので、用足しの行き帰りは、『レオン』のゲイリー・オールドマンよろしく「タララーン」て言いながら、暖簾を中央から左右に華麗に分け開くムーブが出来る。
つまり、「N」を訪れれば『セブン』と『レオン』というトラウマ映画の真似っこが同時に実施できるので、オススメ。
トイレから戻ってみると、また一人新たなお客さんがカウンターに。
マダムと話が弾んでいる。
と、
「カチッ‥」
という擦過音が!
続けて、紙タバコの先から一筋の紫煙が!
吸えるんかい!
なんで聞かんかったや、私。
思わず、マダムに声をかける。
「タバコ吸っても大丈夫なんですね!」
「はい」
「コチラが、吸っておられるのを見て気付かされました!」
「ごめんなさい!お声かけたらよかったですね」
「いいえ、こっちこそ、すみません」
「ハハハ」とマダムと私、お互い笑い、灰皿を受け取る。
つー訳で、ご報告が遅くなりましたが、「N」は
喫煙可
その後、思う存分肺に悪煙を吸いこんで、長居させてもらいました。
ごちそうさまでした。
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥
愛煙家のお客さんが来ていなければ、「N」を禁煙店と認識してしまうところでした。
もっと積極的に生きろや、私。
「ご自由に箱」見つけて、今日一日のタスクを終えたような気になっていました。
すみません。
また、伺います。
google MAP
所在地
金沢市東山2ー14ー40
営業時間
日月 12:00〜18:00
水〜土 12:00〜21:00
定休日
火
席数
カウンター x 6
テーブル x 4
電源
なし
Wi-Fi
なし
SNS
https://www.instagram.com/kissa.n_2018
店内BGM
MROテレビ(TBS系)
トイレ
洋式(ウォシュレット)
喫煙の可否
喫煙可